アラ・アルチャ国立公園

中央アジア東部から中国を東西2500kmにかけて走る長大な天山山脈の支脈、キルギス・アラトー山脈。そして、そこから流れるアラ・アルチャ渓谷一帯がアラ・アルチャ国立公園として保護指定されていて、ビシュケクから1時間程度というアクセスの良さもあり、「キルギスの上高地」の異名を持つ。その奥座敷とも呼べるアクサイ氷河一帯には、登攀対象となる壁や尾根が無数にあり、その中でも今回は、Corona峰、Free Korea峰に目星を付けていた。
アクサイ氷河末端にほど近いところに、通年営業のラツェクハット(3300m)があり、初日はここまでのトレッキングとなる。Yandexという配車アプリを利用して、宿からアラ・アルチャ国立公園の登山口まで(1307C≒¥2128)。なお、マルシュルートカ(乗合ハイエース)でも国立公園ゲート付近まで移動することは可能だが、便数が少なく、車道を10km歩かなければならないので現実的でない。また、国立公園入場料として、車一台につき700Cかかる。


さて、アラ・アルチャ国立公園の由来についてだが、これはアラ・アルチャ=コノテガシワというヒノキの仲間が多く自生するかららしい。
コノテガシワは児手柏と漢字で表記し、小枝が垂直に伸びて広がる様子を子どもが手のひらを立てていることに見立てたようだ。日本には江戸時代頃に中国から入ってきたとされ、庭木としてよく見かける。

普段何気なく目にしていた木が、中国および中央アジア原産と知って、少し嬉しくなったが、ふと疑問に思う。
え?なんでカシワ?
カシワといえば柏餅のミズナラに似た波打つ大きな葉っぱが特徴的だが、あまりにも違いすぎる。
調べてみたところ、もともと中国で「柏」はヒノキの仲間を意味するが(確かに真柏という針葉樹の盆栽がある)、元来日本では米を蒸す際に蒸し器の底の穴に詰めた葉を「炊ぐ葉・かしぐは」と呼んでおり、それにカシワ、ホオノキ、あるいはコノテガシワが使われたことが関係しているようだ。
約1週間分の食料及び冬山の装備で足取りは重いが、小鳥やマーモット、アイベックスに励まされながら(?)進む。
氷瀑となったアクサイ・スキー滝を過ぎたあたりから傾斜が増し、アイスバーンの苦しい登りを終えるとラツェク小屋に辿り着いた。


一応、管理元のアクサイトラベルに予約(https://ak-sai.com/en/ak-sai-travel-camps/mountain-hut/ak-sai-mountain-hut/)をしたものの、そんなことは聞いていないという。しかし、今は繁忙期ではないので問題ないらしい。
ラツェク小屋は素泊まり850C、食事付きにもできて朝900C、昼1300C、夜1150Cとなっているが、我々は節約のため素泊まりで。

小屋の裏手のモレーンに登れば、荒々しい氷河末端が眼前に迫り、左にコロナ、ピラミダルなラツェクピーク、そしてフリーコリアが並ぶ。
日本から焦がれた山々に、入山たった1日目で対峙していることがなんだか不思議で、胸の高鳴りを抑えることができなかった。