連日気温が上がり、もはやスキーの気分でもなくなってきたので、今年最初の沢へ出かけた。

ここのところ、静岡、富山での仕事でほとんど太平洋から日本海をパチンコ玉のように移動し、少々お疲れモードだったため、近場を選択。
松本市内を流れる女鳥羽川の源流部を目指した。

自宅から登山口の一ノ瀬までは車で15分。そして、そこから入渓点までも15分ほどと圧倒的な身近さだ。

ヤマフジやガマズミ、ツツジなど初夏の花々が沢筋を彩り、その度に足を止める。
序盤は堰堤を高巻いたり、河原を進んだりと沢登り的興味は薄いが、時折足元をイワナが走り、はっとする。

境沢を過ぎると、岩盤が迫ってきて、小滝やナメ床が発達した美しい景観となる。よく見ると縞状になっている岩盤は海底で堆積したものが隆起したものだ。

縞状の岩盤の間を小滝が流れる

さらに進むと、ゴルジュ状の地形が現れた。右岸から簡単に巻けそうだが、まず水線突破の可能性を探るのが沢ヤだろう。
意外と水深があるので、瞬間的に泳がざるを得ないが、一瞬我慢すればあとは突っ張りで行けそうだ。
パートナーにOKサインを送って、ゴルジュに突入、最後は左のワイドを越えて落ち口に立った。

小規模だが美しいゴルジュ(両側が迫った地形)
突っ張りで越えていく

その先はさしたる悪場もなく癒し系の渓相が続き、10mくらいの滝出てきたので左壁を直登した。
やがて、烏帽子岩に突き上げるルンゼに出合って、その左岸側の尾根を登って、林道蝶ヶ原線にでた。
なお、上記のルンゼは出合いが3段の滝となっていて通常高巻きの必要性があるが、沢に復帰してそこを詰めることも可能らしい。

美しいナメ
二条に流れる小滝
最後の10m滝

松本の街を潤し、時に洪水となって猛威を振るった女鳥羽川の源頭部に、あまりにもできすぎたように烏帽子岩が鎮座している。遡行してきた谷底を俯瞰すると、沢の轟音が響いていた。
ここに水を司る神が宿り、旱魃の際には雨乞いが行われてきたことは自然な流れだろう。

鎮座する烏帽子岩

学生の頃は女鳥羽川を毎日渡って通学し、最近まで徒歩1分で河原に出れるところに住んでいるほど身近な存在にも関わらず、その源流について何も知らなかった。もちろん、存在は知っていたし気にはなっていたものの後回しになっていた。
未知はすぐそこにもあり、そして困難性だけで価値を測ることは自分の視野を狭めることにもなってしまうことを学んだ。

何はともあれ、身近な存在の深い部分を知れたことで、強烈ではなくともじんわりとした喜びを感じる。

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沢登りにハードルの高さを感じていませんか?
沢にも、泳ぎや登攀系、歩き主体のものまで、様々なジャンルがあるので、好みやレベルに応じて選択することができます。
装備も沢登り用の靴があれば、あとはヘルメットやハーネスなど登山にも共通するもので対応できるので、ぜひ沢の世界に一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

ご相談お待ちしております。