
高松市をベースに、毎日ヤブを掻き分け、普段生活している地域とは違う植生の森の中で、小さな発見の連続の日々が続いている。せっかく四国に来たので、満喫しようと意気込み、まずは高知の大堂海岸でクラッククライミングをすることを目的に旅が始まった。解像度の低い土地のことはざっくりと捉えがちで、四国だから近いみたいな安易な発想であることは重々承知していたものの、足摺岬の西方、高松から四国のもっとも遠い場所である大堂海岸には強い憧れがあった。
1日目
早朝、松本を出て、昼には高知に着いた。コロナ禍のころの高知出張の思い出の味、「じゃんめん」でスタートダッシュを切って、それから牧野植物園へ。興味深い植物が次々と登場し、そのたびに足を止めるものだからなかなか進まない。2時間くらいで十分だと思っていたが、結局周りきることすらできなかった。季節を変えてまた訪れたい。夜は、ひろめ市場でカツオ、餃子、ビールで決めてフィニッシュ。幸先のいいスタートを切った。



2日目
この日は天候が安定せず、大堂海岸でのクライミングは諦めて、観光しながら移動することにする。ちなみに高知市からでも大堂海岸は3時間くらいかかる。四万十川で、最近始めたパックラフトで川を降ることも過ったが、アクセスの都合で断念。沈下橋から川を眺める。もっと上流の沈下橋で、飛び込んで遊んだのが懐かしい。その後はジョン万次郎資料館で彼の波乱万丈の人生を学び、足摺岬で散歩して、竜串海岸の奇岩を楽しんだ。






3日目
ようやく、クライミングDay。とりあえず初見参なのでモンキーエリアへ。ちょっと悪いアプローチをこなして、海岸に降り立つと花崗岩の白く巨大な岩壁が眩しく、そして圧倒される。ここまでドタバタしていたので、ルートの情報はほとんど調べていなかったが、真っ直ぐに伸びる美しいクラックが目に飛び込んで来たので、トポもよく見ずに登ることにした。終了点を通り過ぎで登り続けてしまったが、ハンドジャムの素晴らしいルートで、これが「スーパークラック」だった。その後は、岡山ルートやモンキールーフなどを登ったが、どちらも素晴らしいルートで、長さもあるので1本リードするごとにどっと疲れる。こんなスケールの大きな岩場を貸切で登れるなんて、本当に幸せだ。




4日目
ちょっと早起きして、水平線から登ってくる太陽に挨拶をしてクライミングが始まる。最初に登ったのは、「うず潮」。花崗岩の方状摂理が織りなすキュビズムの芸術を、両手両足を岩の隙間に突っ込んで登っていく。日の当たる東面なので、ありがたかった太陽の温もりが、威圧的な熱へ変わり、汗が吹き出す。そして、ビレイ中には、蚊にたかられる。暖かいことは想定していたけど、半袖でも暑いなんて。もうすぐ12月に夏というのに。
その後は、「ぐいの実」「シャトル」あたりを登って、あまり疲れ切る前に早めに切り上げた。次なる目的地があるからだ。
高知といえば、やっぱりカツオ。初日にも食べたけど、シメにもやっぱり。400年以上の歴史を持つカツオの一本釣り漁の街、久礼の田中鮮魚店へ立ち寄った。自分で値札のついたサクを選んで、隣の食堂で刺身にしてもらっていただく。カツオの刺身、たたき、ウツボのたたきを腹一杯。カツオはモチモチ、ふわふわ食感で、もう言葉が出ない。どっぷりとした疲労感と、それに負けないくらいの充実感を抱きつつ、次なるフィールドの高松へと向かうのだった。




