
帰国直後は、信州の里山から残雪のアルプスを眺める山旅へ。
京ヶ倉・大城
初日は、生坂村の京ヶ倉と大城を巡る。登山口からしばらくは緩やかな登りだが、登山道は次第に急登になっていく。
ロープやハシゴが連続するようになると、ヒカゲツツジの群落が出迎えてくれた。


ハイライトは馬の背と呼ばれる痩せ尾根。両側が切れ落ちてはいるが、空は真っ青で、爽やかな風が引き抜けて心地よい。
蛇行する犀川の流れの向こうに、残雪の北アルプス。春にしては霞のない、くっきりとした空だった。


往路を戻るのではもったいないので、山城のあった大城を経由し下生坂に下山。ここからは5km程度の車道歩きになってしまうので、私が車を回収に走る間、名物を召し上がっていただいた。
写真を撮るのを忘れていたが、「かついえおやき店」の灰焼きおやき。
信州の郷土料理の代表格、おやきには様々な流派がある。なかでも、「灰焼きおやき」は生坂村や八坂村(現:大町市)などを中心に作られてきた囲炉裏の灰の中で焼き上げる製法だ。見た目はソフトボールのようだが、皮がパリッとしていていて、中身もつまってずっしりとしている。
現在は、保健所の許可が降りないため、新規では開業できない幻の味だ。
数に限りがあるので、予約をしておくのが吉である。

芥子坊主農村公園キャンプ
入浴を済ませた後は芥子坊主農村公園に移動し、この夏テント泊での山行を目指すお客様のリクエストで、テントの設営方法等についてレクチャーさせていただいた。
そして、晩御飯は信州新町のジンギスカン。戦前、主に軍服の生産のために綿羊の飼育が奨励され、信州新町では乾燥した気候が適していたため、多くの羊が飼育されていた。そのため、羊肉を食べる文化も根付いていったという。



翌朝も素晴らしい青空。朝食は、ホットサンドとコーヒー。
テントの撤収についてもレクチャーして、大姥山の登山口へ。
大姥山
登山道では所々で金太郎が出迎えてくれる。信州・八坂では、八面大王と大姥山に住んでいた大姥(やまんば)の息子が金太郎だという伝説がある。
ちなみに、国道19号沿いの大姥神社前宮には、子供の夜泣きを止めるために大姥様の「ムシキリ鎌」を借りてきて、2丁にして返すという風習があったようだ。山姥という恐れられる存在でありながら崇められている、まさしく「畏怖」の対象であった。


鎖場の連続する急な登山道を登ると分岐となり、左へトラバースしていくと大穴に至る。大穴の真上には金太郎と熊が遊んだという穴や、また大穴の向こう側は糸魚川の上路に続いており、耳をあてると潮の音がするという伝説がある。

平和な山頂からは今日もアルプスが迎えてくれた。金太郎の父親である八面大王の住んでいた有明山もくっきりと見えた。

帰りは金太郎の散歩道、ミズナラの新緑の美しいトレイルを山姥の滝まで降りていく。

帰国直後で季節の進み具合がよくわからぬままにこの日を迎えたが、淡く、山萌ゆる春の信州の美しさを堪能することができ、つくづく、素晴らしいところに住んでいると感じた。
高い山も素晴らしいが、人々の生活と結びついた里山にも多くの魅力があり、里から眺めるアルプスもまたよし。
こんな技術を学びたい、あんなことしてみたい、というご相談には可能な限り対応していきたいと思いますので、お気軽にお問合せください。